群の制御によるアメニティ(快適空間)設計

1. ベクトル場と連続体による群のマクロモデル化

多人数からなる群内の個体全ての動きをひとつひとつ記述したのでは膨大な計算が必要となります.そこで,本研究では群をマクロにとらえ,群の意思(全体が向かおうとする動き)をベクトル場でモデル化し,さらに,連続体の密度計算によって混雑度を定量的に評価します.まず,下左図のように,部屋内の人の動きの経路を与えます.次に,右図のようにこの経路に引き込まれるようなベクトル場を設計します.
ここで得られたベクトル場を f(x) とします.次に,ある点における密度ρを連続の式(連続体の質量保存則)を用いて

 

で計算します.ただし,

 
 

です.これらを用いて密度を計算すると下図のようになります.このように,混雑度合いが連続体の密度として計算されます.

2. 自律移動群ロボットの設計

群誘導制御の検証用として,下図のような自律移動ロボットを試作しました.
このロボットは
  1. StarGazerによって天井のマーカを観測し,位置と姿勢を計測可能です.
  2. ロボットの前面には赤外線距離センサが搭載されており,障害物を検知します.
  3. SH-2マイコンを搭載し,場の計算をロボット内で行います.
  4. ホストPCと無線LANによって通信可能です.
  5. 3つのオムニホイールをもった駆動輪を有し,前方向移動可能です.
  6. Li-Poバッテリを搭載しています.
このロボットを20台作成しました.

3. 場の最適化による避難誘導のための誘導員配置

下図のように,2つの避難経路があるとき,1つが利用不可能となった場合,適切に誘導員を配置して人々を安全な経路へ誘導する必要があります.
本研究では,避難経路・誘導員の指示をベクトル場で表し,これを最適化することで適切な配置,人数を求めます.下図はロボットを用いて避難誘導を行った様子です.適切な経路へと誘導されている様子が分かります.
誘導なしの避難
誘導ありの避難

4. 展示場における展示品の配置最適化

下図のように,展示品の配置を変えることで混雑を緩和した快適空間が設計可能です.
本研究では,人が展示品を見る行為をベクトル場で表し,さらに,立ち止まって展示品を見る時間を表すための次元拡張を行って,展示品の配置最適化を行います.下図は,展示品の配置最適化を行っている様子です.展示品の移動と共に,展示場にいる人の数が減っていきます.


e-mail : @mep.titech.ac.jp