-スマートマウスガード-
概 要
18世紀の産業革命以降,疾患の治療や延命を目的とした医療技術が発展してきました.一方,今日ではSociety 5.0時代のヘルスケアとして,疾患の前段階における未病のケアや予防医療技術による健康寿命の延伸が求められています.
これを実現する革新的医療技術として,体内IoTセンサによる個人の日常的なバイタルセンシングが要となっています. 特に口腔内は唾液や咬合力(嚙む力)など,健康に関する情報が豊富に存在することから,センサを埋め込んだスマートマウスガードによる健康バロメータの常時測定が期待されています.

噛む力で発電する口腔内エネルギーハーベスティング

マウスガードにセンサを搭載する際,誤飲の危険性から電池が使用できず,いかに電気エネルギーを確保するかが課題となります.そこで当グループではエレクトレットを用いた薄型発電シートを開発しています.
エレクトレットは半永久的に電場を保持可能な特殊な素材です.マウスガードを嚙んだとき,発電シートがわずかに圧縮されますが,このとき咬合力(力学的エネルギー)が電気エネルギーに変換され,電力が得られる仕組みになっています.床発電等で使われる圧電素子と比較すると,人の噛む力に対しては100倍以上の発電量を実現しています.
咬合力センシング
年齢とともに咬合力等の口腔機能が低下することをオーラルフレイルと呼びます.このオーラルフレイルが進行すると,要介護リスクが上昇することが知られており,早期のオーラルフレイル検知は健康寿命延伸における極めて重要なヘルスケアです.
そこで,上記発電シートを咬合力センシングにも応用しています.発電で得られた電圧をもとに,シートの圧縮に関する非線形特性や電気回路のダイナミクスを解くことで,どのような咬合力が作用しているか推定します.単なる圧縮力だけでなく,歯ぎしり等で作用するせん断力も計測可能な3次元咬合力センシング技術を開発しています.
